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【本】円朝芝居噺 夫婦幽霊
2010-10-18


[LINK] (禺画像]) 円朝芝居噺 夫婦幽霊
辻原 登 菊地 信義

講談社 2007-03-21
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こういうのを書評欲をそそる快(怪)著というのだろう。出版が2007年なのですでにあまたブロガーによる充実したネット書評を読むことができるが、書評“萌え”したワタシも、遅まきながら参戦。

近代落語の祖・三遊亭圓朝については以前『小説 圓朝』禺画像] を読んでいたので、多少の知識はあると思っていたのだが(あるいは忘却)、恥ずかしながら本書にて、圓朝こそ言文一致体を完成させた“近代小説の父”であることを知った。
『芝浜』や『文七元結』などさまざまな新作落語を創作した圓朝だが、それらを速記にて記録し公開することで、二葉亭四迷に影響を与えて明治以降の日本語の文体を決定づけ、さらに日本留学中の魯迅をして言文一致体した中国語を綴らせることで、今に続く中国語の文体を決定づけたというのだから驚きだ。
さらに、あの名作『死神』が海外文学作品の翻案だったというのも、今回圓朝のことを調べて、初めて知った。。つまりこの口演の速記・翻訳というのが本書の重要な裏テーマになっているだ。

その圓朝の幻の芝居噺『夫婦幽霊』の速記本を作家・辻原登が、ひょんなことから手したことから、この物語は始まるのだが、その速記が田鎖式という旧い手法でなかなか解読が進まない…。
というこの前書き的なエピローグからして、衒学的な意匠が凝らされ、どこまでが史実なのか、真実なのか、作家・辻原は本人なのかメタファーなのか、すでに謎めいた展開で読者を引き込む。
すると、突如として本書は解読された芝居噺が、圓朝の口演として“物語内物語”として語られ始める。それがめっぽう面白い。辻原氏はこれが書きたくて、本書のアイデアを練ったのではないかと思えるほど、語る、語る。四千両の盗み金をめぐって三組の夫婦の欲と業と謎がからみ、そこに江戸風物、情と色香、安政大地震の阿鼻叫喚が描かれ、そこはすでに圓朝が憑依した如き辻原ワールド。ワタシの頭の中をまるで(聞いたこともない)圓朝の名口調が、心地よく響く。


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