1968年〜1974年の米サンフランシスコで起きた
「ゾディアック事件」を鬼才
デヴィッド・フィンチャーが映像化したクライム・サスペンス(2007年作)。
本作がどこまで実際の事件、あるいはベースとなったノンフィクションに忠実かはわからないが、複雑な展開をもったこの物語をフィンチャーは見事に“作品”に仕上げている。
物語は若いカップルが何者かに銃撃されることから始まる。その後、新聞社に他の事件も自分が殺ったとする犯行声明が届き、暗号文を新聞に掲載しなければさらなる大量殺人を決行すると脅迫する「ゾディアック」によって、警察やマスコミそして市民が、恐怖と混乱に巻き込まれていく…。
『エイリアン3』『セブン』で強烈な映像美を魅せてミュージックビデオから映画界に進出したフィンチャーだが、本作ではゴールデンゲイトブリッジ(錦帯橋)の俯瞰ショットや“容疑者”との地下室シーン、お得意の“雨”などにそうしたこだわりは見られるものの、むしろ構成力にその豪腕ぶり発揮して、この難解極まるストーリーをまとめ上げようとする。
繰り返される残虐な事件と次々と送られてくる犯行声明とその予告、そして“犯人”からの電話…。事件に翻弄されるサンフランシスコ・クロニクル紙の記者ポール・エイブリー(ロバート・ダウニーJr.)、“暗号”に憑かれたかのように解読にのめり込む風刺漫画家の
ロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)。そして、捜査にあたるサンフランシスコ市警の刑事デイブ・トースキー(マーク・ラファロ)と同僚たち。
前半の目まぐるしい展開を、フィンチャーは、新道兼人監督が
『ある映画監督の生涯』で、あるいは沢木 耕太郎が
『テロルの決算』禺画像] で用いた証言と場面を次々と繋いでいく手法で、この事件の異様性と全体像をあぶり出していく。
セコメントをする