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【本】メディアと日本人--変わりゆく日常
2011-06-12


[LINK] (禺画像]) メディアと日本人――変わりゆく日常 (岩波新書)
橋元 良明

岩波書店 2011-03-19
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本書の「あとがき」にこうある。

本書を読まれた方から、おそらく寄せられるであろうコメントの一つは、メディアの盛衰を語る際、それらが伝える内容、質への言及がほとんどない、というものだろう。

著者自らがこう記すように、本書は江戸前期から現代に至るまでの「メディアと日本人」の関係を、冷静な“データ”解析よって読み解いた本である。

なにしろ冒頭から、1590年(!)に天正遣欧少年使節によってグーテンベルク印刷機が持ちこれまれていたという事実に驚かされ、「日本に立ち寄った西洋人たちは、現代でもしばしば指摘される日本人の知的好奇心や外国文化受容の柔軟性、模倣能力もつとに指摘していた」として、「近代日本人の情報意識」を紐解き始める。

この1章で、新聞、ラジオ、電話、テレビ、インターネットの登場とその影響・広がりについて俯瞰し、2章ではその利用実態の変遷を詳らかにする。
3章からはやや視点を変え、「メディアの『悪影響』」「ネット世代のメンタリティー」の考察へと続く。

なにしろデータ主義だ。
そこには壮大なドラマも、著者によるおしつけがしまい論もない。
データに基づいた解析文が淡々と続くのだが、時折、著者独特の眼力がギラリと光を放つ。

例えば、「電話の登場とその影響」(1章)では、「携帯電話は、固定電話が我々にもたらした影響の一つの『空間の再配置・モザイク化』をさらに進めた」として、著者らによる若年層対象の調査で「携帯電話の通信の相手で、最も頻繁にやり取りするのは身近な親友であった」ことを引いて、「電話は『心理的隣人』を創出したと言われたが、携帯電話は『心理的同居人』を作り出した」と結論づける。

また、「テレビの衝撃」(同)では、「精神世界におけるテレビの最大の『功績』は、原初的な視覚世界を復権させたことであろう」として…

ヒトが、その処理能力において圧倒的優位性を誇る視覚情報を、日常的に十全にメディア上のコミュニケーションに載せることができるようになったのはテレビの登場以降である。テレビの普及以降、雑誌、書籍でも写真などグラフィカルな要素が多用されはじめたことは、テレビが視覚動物本能を刺激したことと無関係ではなかろう。

…と興味深いテレビ/視覚論を展開する。

また、「携帯ネットの長時間利用」に触れて、「今の多くの若者にとって、日本も将来も自分が見えない」「若者層全体を覆う『心理的巣籠もり』現象である」と指摘し、「多くの若者が、SNS、ミニブログの世界から、言いっぱなしが許されるTwirtterに流れていく心理がわかるような気がする」と、若者たちの閉塞感に寄り添う…。

一方で、喧伝される「メディアの悪影響」については、さまざまなデータを引き合いにNO!を突きつけ、「ネットがテレビを衰退させた」論についても疑義を唱える…といった具合。


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