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【本】ルポ 生活保護―貧困をなくす新たな取り組み
2010-12-21


[LINK] (禺画像]) ルポ 生活保護―貧困をなくす新たな取り組み (中公新書)
本田 良一

中央公論新社 2010-08
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日本の「生活保護」の問題を、被受給者の実態と構造的な分析から明らかにし、さらに副題にある通り「貧困をなくす新たな取り組み」まで紹介し、提言した力作。

日本では現在、全国で190万人を超える生活保護受給者がいる。本書では、全国平均で「80人に1人」としていたが、もうすでに70人に1人が生活保護受給者なのだ。日本がもの凄い勢いで貧困化が進んでいることを示す数字であるが、筆者が取材した釧路では、すでに20人に1人が生活保護受給者であるという。

そこに描かれるのは、受給世帯の過酷な生活実態だ。
丁寧なルポから、不況で仕事が激減し、病気で働けなくなるなど、さまざまな理由から生活保護を受けざるを得なくなった人びとが呻きが聞こえてくる。
例えば、フルタイムで働いても月収13万円にしかならない母子家庭…。「母子家庭は元祖ワーキング・プアだ」とする言説が、改めて胸を突く。

一方で、所得調査や資産調査でプライバーシーがオープンになる「恥ずかしさ」がスティグマ(心理的嫌悪感)となり、申請に二の足を踏む人がいる。
窓口で職員からひどい言葉を浴びせられ、「絶対に生活保護だけでは受けたくない」という人もいて、なんと貧困世帯の8割以上が生活保護を受けずに生活しているという事実に驚かされる。
本書にも、生活保護を受けずに、資格を取るために骨身を削って働き、学ぶ母子家庭の母親が登場する。

前半のルポを受けて、筆者はさらに生活保護が抱える構造的な問題に切り込む。
学歴と貧困が密接に結びついて「貧困の連鎖」を生む、「貧困の再生産」の実態を具体的なデータを基に明らかにする。そして、貧困が児童虐待や寿命にまで影響を与えていることを指摘する。

非正規労働者の増加などで、今や給与所得者の22.7%、1032万人が年収200万人に届かないワーキング・プアに陥っている。ざっと5人に一人がそうなのに、雇用のセーフティネットも脆弱だ。
いまだに850万人の非正規雇用者は、雇用保険のネットにもかからず、取り残されたままだ。

こうした実態と問題点を告発したうえで、筆者はさらに「提言」へと筆を進め、労働市場の崩壊を防ぐためには、「労働市場の内部規制の強化と、外部のセーフティネットの再構築をセットで行わないといけない」として「セーフィネットの拡充は社会を維持する上で必要な投資であるという社会の合意が不可欠だ」とする。

終盤にかかる第6章では、さらに深度を深め、「ボランティアから就労へ、と階段を上るように自立へ向けて、進んでいく」釧路市の自立支援プログラムを紹介している。
「ボランティアを通して社会との接点を持ち、社会に貢献するなかで、自分の存在を肯定的にとらえるようになり、元気を回復していく」という実験的な試みだ。
受給者が地域の子どもに勉強を教えるなど、こうした受給者の自立につながる

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