日本にそれが紹介された当初はキワモノ的な扱いをされていた(と思う)「スピリチュアル」だが、いつの間にか「スピ系」としてフツーの人があたり前のように語るようになった興隆ぶりを受けて、それを「成長産業」としてビジネスの視点から俯瞰した書。
「スピリチュアル」というと、つい
『アクエリアン革命』禺画像] や
ニューエイジ、
シャーリー・マクレーンといった欧米の精神世界ブームばかりを想起してしまう世代だが、じつは「スピリチュアリティは日本人にとって意外にも身近なのもである」と、まずは筆者が指摘する。
なんと「神社仏閣の数は約16万と、コンビニエンスストア数(4.3万)や郵便局数(約2.4万)の合計よりもはるかに多い」「初詣参拝客は1億人に迫る勢いであり、アンケート調査でも4分の3以上が年1回以上参拝していると」と意表をつく「和スピ」の浸透を指摘をしたうえで、「それでも日本人はスピリチュアルなことを信じているのだろうか」と疑問を呈し、米国のスピリチュアル・ビジネスとの比較(差異)を明らかにしていく。
米国内のレイキ利用者120万人(米国成人の約0.6%)、ヨガ利用者1600万人(人口の約5.3%)、ヨガ市場約3000億円以上という数字を紹介しないがら、「移民社会である米国であるからこそ、出身国の文化の一部として風水やヨガといったスピリチュアルなものが持ち込まれ、それらが生活の一部となって定着し、多様性を重視する中で広く社会に浸透している」とする。
一方で、2000年代中頃から興隆した日本のスピリチュアル・ブームについては、「スピリチュアリティが浸透したのではなく、スピリチュアルな考えに深く触れた経験のない多くの人々が批判的吟味をする材料が乏しかったがために、表面的に手軽な開運などの考え方に飛びついて広がったとも解釈できる」として、「お参りや占いゲーム等を中心に利用する大量のライト・ユーザーがマジョリティを占めるというわが国固有のスピリチュアル・マーケット構造が生れている」としている。
スピリチュアル・ビジネスを利用する目的やメリットを問うたアンケート調査でも「特にない、なんとなく」を選んだ人の割合が高いことも、その証左とするなど、冷静な視線でこのブームを分析する。
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