本書は、副題にある通り、ミュージシャン、エンジニア、DJ、レコード店経営、音楽教師、音楽ライター、アーティスト・マネージメント、イベンター、レーベル経営、レコード会社社員、楽器リペア(修理)、PA、舞台監督など、20数種にわたるさまざまな「音楽を仕事にする人々」のインタビューをまとめたもの。巻末には、
著者自身も編集の傍ら、
「RAWLIFE」なるイベントを主宰した経験を持つイベンターとして登場する。
本書を読み始めて、真っ先に頭に浮かんだのは、インタビューの名手として知られる
スタッズ・ターケルの諸作だ。なぜなら、じつはワタシもかつてターケルの手法で何冊もの
インタビュー集禺画像] を上梓しているので、ああ、こんな若い世代にもワタシと同じ“ターケルズ・チルドレン”がいたのかと、つい思い及んだ次第。
もっとも72年生れの著者が、ターケルを意識をしていたかどうか定かではないが、ターケルが市井の人びとから魔術のように引き出す言葉たちから、見事に“物語”を紡ぎだす手法は、本書でもイキイキと再現されている。
なにしろそのインタビューイーたちの語り(体験)が面白い。
いわゆるスタジオ・ミュージシャンと呼ばれる人たちにも「ジャズ屋かそれ以外」の二種類のタイプがいて、ジャズ屋は「芝居でいったら新劇出身者みたいなもので(略)、基本が完全にできている」だの、「『なんだこのメンバーは?』っていうバンドでツアーに行かされ(略)、そういうのが苦手な人はノイローゼになります」という“人間関係”に悩み、「友だちで売れた人はいませんから。死屍累々です(笑)」という音楽業界の厳しい現実が、まず開陳される。
さらには「マスタリングなんて要らないと思いますよ」というエンジニアの発言や、地方のオーガナイザーとのつながりを大切にし「土曜日はすべて地方にあてています」というDJ、レーベルを立ち上げ、節約のために「デザインは全部自分でやっちゃいますよ」と外貼りシールのデザインまで手がけるミュージシャン、事務所を持たず「打合せなら公園で会ってもいい」というマネージャーまで、知らないこと、目からウロコな話がドサドサ出てくる。
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