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【映画】ゴールデンスランバー
2010-12-08


禺画像]
『ゴールデンスランバー』(2010年・監督:中村義洋)
中村義洋監督作品を観るのは本作が初めて。まったく先入観なく鑑賞を始めたのだが、とにかく冒頭から中盤にかけての、その荒唐無稽なテレビドラマチックな展開は、先日レビューした『誰も守ってくれない』のデジャヴかと…当初は頭を抱えた。

とにかく首相暗殺犯に仕立てられた主人公(堺雅人)に対して、いきなり警官は発砲するし、警察のスナイパーは“狙撃”するし、端から目的は“犯人逮捕”ではなく、“殺害”が目的のような追走劇が展開される。

本人だけでなく、単なる大学時代の友人(劇団ひとり)宅に押しかけて、メチャメチャに暴行するなど、もうやりたい放題。
もちろん冒頭から主人公は「オズワルド」にされているわけだから、超法規的な“捜査”が行われるのは、“物語”としては正しいのかもしれない。ところが、おそらく原作禺画像] (未読)では書き込まれているのであろう暗殺劇の背景や真相が、本作ではスッポリと端折られているので、ワタシの頭の中は「ありえない!」の連続で、もう笑うしかなくなる…。

ところが中盤になって、伊東四朗扮する父親が衆人が見つめるテレビカメラに向かって、「オレは息子を信じているんじゃない。息子のことを誰よりも知っているんだ!」と、これまた「ありえない」啖呵を切ると、ワタシはなぜかこの映画的な“ファンタジー”にほだされ始める。

『ミンボーの女』でヤクザの親分を思いっきりのアップで演じたベンジャミン伊東が、これまた思いっきりのアップで息子の無実を訴えたときに、可笑しみ以上に、なぜかこの無垢な主人公へ感情移入している自分に気づく…。
そして、これはもう“ファンタジー”として本作につき合うしかないとワタシが腹を括り始めると、ようやく前半に付された数々の“伏線”が回収され始め、映画的な面白みが醸しだされる。
まあ、怪優・柄本明扮する“裏家業の男”らによる大がかりの“仕掛け”によって、永島敏行扮するスナイパーが吹っ飛ぶのは、“ファンタジー”なのだから笑って済まそう(笑)。

それにしても、元恋人の竹内結子が幼子を抱えながら、あそこまで危険を侵して主人公を助けようとしたのは、ワタシには伏したる“純愛”というよりも、仲間たちと「ゴールデン・スランバー」を共有しえた、かつての自分に出会うための“自分探し”だったのではないかと思えるのだ。


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